「楽天で売れているが、利益が思ったより残らない」「自社ECを作ったが集客できない」——EC運営に取り組む小売事業者から、こうした声をよく聞きます。

モールECと自社ECには、それぞれ明確な強みと弱みがあります。どちらかだけに依存するのではなく、目的に応じて使い分けることが、EC事業を利益の出る体制に育てるための鍵です。本記事では、経済産業省のデータをもとに現状を把握しながら、小売業が取るべきEC戦略を解説します。

EC市場の現状:成長は続くが競争も激化

経済産業省が2025年8月に発表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の日本国内BtoC-EC(消費者向け)市場規模は26兆1,000億円(前年比5.1%増)に拡大しています。

物販系分野のEC市場規模は15兆2,194億円(前年比3.7%増)。EC化率は9.8%と、依然として約9割の購買が実店舗・非EC経由であることを示しています。
出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)

市場は成長を続けている一方、モールへの出店者も増加しており、価格競争や広告費の高騰により、売上は伸びても利益が残りにくい構造が強まっています。

モールECのメリット・デメリット

メリット

  • 楽天市場・Amazonなど、既存の集客力を活用できる
  • 新規顧客へのリーチが早い
  • 決済・物流インフラが整っている

デメリット:コストが重くなりやすい

モールECの最大の課題はコスト構造です。主要モールの手数料を整理すると以下のとおりです。

モール 販売手数料(目安) 月額固定費(目安)
楽天市場 売上の2〜8%程度 25,000円〜(プランによる)
Amazon 売上の8〜15%程度 4,900円〜(大口出品)
自社EC 決済手数料のみ(3%前後) システム費用のみ

※手数料はカテゴリ・プランにより異なります。2024年時点の公開情報をもとに作成。

さらにモールでは、広告費・ポイント原資・送料無料施策など、手数料以外のコストも積み重なります。売上規模が大きくなるほど、手数料負担が利益を圧迫します。

また、モールでは顧客データを自社で保有できないという制約もあります。誰がいつ何を買ったかというデータはモール側に蓄積され、リピート施策やCRM活用に制限がかかります。

自社ECのメリット・デメリット

メリット

  • 販売手数料がかからず、利益率を高く保てる
  • 顧客データを自社で保有・活用できる
  • メルマガ・LINE・SNSと連携したCRM施策が打てる
  • ブランドの世界観を自由に表現できる

デメリット

  • 集客を自力で行う必要がある
  • 軌道に乗るまでに時間がかかる
  • 構築・運用の初期コストが発生する

自社ECは「集客力がない」という弱点がありますが、裏を返せばモールで獲得した顧客を自社ECへ誘導することができれば、LTV(顧客生涯価値)を大幅に高めることができます。

小売業が取るべき「使い分け」戦略

モールECと自社ECは「どちらか一方」ではなく、役割を分けて併用するのが現実的な戦略です。

役割 適したチャネル
新規顧客の獲得・認知拡大 モールEC(楽天・Amazon)
リピーター育成・LTV向上 自社EC+CRM(メルマガ・LINE)
ブランド構築・世界観の表現 自社EC+SNS
利益率の高い販売 自社EC

特に意識したいのは、モールで出会った顧客を自社ECへ引き込む導線づくりです。同梱チラシやSNS誘導など、モール販売を「接点」として活用し、自社ECでの購買・リピートにつなげる設計が、長期的な利益向上につながります。

まとめ:自社EC強化は「今」始めるべき理由

EC市場全体のEC化率はまだ9.8%です。裏を返せば、EC化が進む余地は十分に残っています。しかし、モール依存のまま売上を伸ばし続けると、手数料負担も同時に膨らみ、利益構造が改善しません。

自社ECの育成には時間がかかりますが、だからこそ早く始めるほど有利です。モールで集客しながら、CRMで顧客との関係を深める自社ECを並行して育てていく——この二段構えの戦略が、小売業のEC事業を次のステージへ引き上げます。

ノテモでは、自社EC運営の立ち上げから、CRM・メルマガ・SNSを活用した顧客基盤づくりまで、中長期で伴走支援しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からご相談ください。

【参考資料】
・経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
・各モール公式サイト(楽天市場・Amazon)掲載の出店費用情報をもとに作成